熟年夫婦の意識のズレ

1 月 5th, 2010 | By ikeuchihiromi | Category: 離婚と家族問題のコラム

熟年夫婦「夫は一緒に取り組んでいるつもりでも、妻はそう思っていないことも」

明治安田生活福祉研究所、「熟年夫婦の生活に関する意識調査」結果を発表

株式会社明治安田生活福祉研究所は、全国の50・60歳代の熟年層2,806人を対象に、日常生活、家族との関係、地域や友人との交流、就労、住まい、家計など多岐にわたって意識調査を実施した。

主な結果として8項目をあげており、「夫は“一緒に”取り組んでいるつもりでも、妻はそう思っていないことも」「コミュニケーションが不十分な夫婦の40%が”老後も一緒に暮らすかどうかわからない”」「資金援助はしないつもりでも、援助するのが親ごころ」「経済的には頼らないけど、介助は頼らざるを得ないかも」「年金生活者の4人に1人が”毎月貯蓄”」「引退後も“家事”の担い手はもっぱら妻?」「”妻との対話”を望む夫、”友人や仲間との交流”を望む妻」「妻は“日常的”で個人的な付き合い、夫はイベントなど“非日常的”で集団の付き合い」というキーフレーズが見えた。

50歳代前半の30%が、夫婦共通の趣味や一緒に取り組んでいることは「特にない」と回答しているが、年齢層が上になるほどその割合が低下、すなわち夫婦で何かしら一緒に取り組んでいる割合が高まる傾向が見られた。「特にない」人の割合には、50歳代の前半と後半で大きな落差が見られた。多くがまだ現役で働いている50歳代後半の段階で、すでに家庭への回帰が進んでいると見ることができる。

女性は〝日常的な〟行動で、男性は〝非日常的な〟行動で〝夫婦一緒〟を意識しており、男女間で選択率に差の目立つものを抽出したところ、〝日常〟行動といえる「散歩・ウォーキング」や「ガーデニング・家庭菜園」は、女性のほうが選択率が高い。いっぽう、「国内旅行」や「ドライブ・ツーリング」のように計画を立てて行う〝非日常〟行動は、男性のほうが高かった。

女性のほうが、夫婦で毎日行っているごく日常的な行動を、「夫婦で一緒に取り組んでいる」と意識する傾向がやや強いと言えそうだ。男女差がもっとも大きいのは「特にない」。この差は、夫は一緒に取り組んでいるつもりでも、妻はそう感じていないケースがあることを表しているといえる。

生活全般に関する満足度には、夫婦共通の趣味や一緒に取り組んでいることの有無によって大きな差が見られ、共通の趣味や取り組みが「ある」人の場合、男女とも3分の2が〝満足派〟(「満足」と「まあ満足」)で、〝不満派〟(「やや不満」と「不満」)は10%強にすぎない。

いっぽう、「特にない」人では〝満足派〟は男女とも半数に満たず、〝不満派〟が「ある」人のほぼ2倍に達した。生活全般の満足度には経済面や健康面、生きがいなどさまざまな要素が影響すると考えられるが、夫婦一緒の取り組みの有無による差がかなり目立つ結果となった。

「夫婦間のコミュニケーションは十分だと思うか」という質問に対する回答に、夫婦共通の趣味・取り組みがある人とない人とで、際立った違いが見られた。共通の趣味・取り組みが「特にない」人の場合、男性の30%、女性の30%と、5分がコミュニケーション〝不十分派〟(「やや不十分」と「不十分」)。特に女性では、〝十分派〟(「十分」と「まあ十分」)と〝不十分派〟が拮抗するほど〝不十分派〟が目立つ結果となった。

共通の趣味・取り組みが「ある」人では、男女とも4人中3人が〝十分派〟で、〝不十分派〟は10%に満たないのと対照的。夫婦間のコミュニケーションは、共通の趣味を持つことや、何かに一緒に取り組むことによって深まっていく可能性が高いといえる。

老後は「夫婦2人で自宅で暮らす」と回答した人の割合は、コミュニケーション〝十分派〟は男女とも70%前後。コミュニケーションが不十分なほど割合は低下している。コミュニケーションが「不十分」と回答した人の約40%が、老後の住まいを「未定・わからない」と答えている。

熟年層は老後の家族構成がある程度想定できる世代にもかかわらず、こうした回答が多いことは、コミュニケーションが不十分な夫婦のなかには、将来夫婦で一緒に暮らしていくことに自信を持てない人もいることが伺える。

子どものいる熟年夫婦に一般論として、「子どもはいつ頃までに経済的に自立すべきか」を尋ねたところ、どの年齢層でも「就職して収入が安定したとき」と答えた割合が50%前後で最多となっており、これが現在の親の一般的な意識と捉えることができる。逆に言えば、学校を卒業したからといって、必ずしもすぐに自立する必要はないということ。

年齢層別に見ると、高年齢層ほど「学校を卒業したとき」という早い時期での自立を望む割合が低く、「結婚したとき」の割合が高い。一般論として尋ねた質問ではあるが、自身の子どもの実態を反映した結果と推察される。

60歳代後半の人は子ども(長子)の90%がすでに経済的に自立している。そこで子どもが実際に自立した時期を尋ねたところ、「就職して収入が安定したとき」と答えた割合は37.9%で、上述の一般論の場合と比べて12.0ポイント低く、それより遅い「結婚したとき」は23.5%と9.3ポイント高くなっている。

また「まだ経済的に自立していない」という回答も少数ながら存在する。上述の一般論としての自立時期と比べて、実際のほうが遅いことがわかる。なるべく早く自立して欲しいと願うのが親の気持ちであろうが、実際はそうもいかないことが伺える。

子どもがいる人を対象に、「結婚した子どもに対してどんな時に資金援助をすると思うか(実際に援助を行った場合にはそれも含む)」を尋ねたところ、いずれの選択肢についても、おおむね年齢層が高いほど選択率が高くなる傾向があり、逆に「援助はしないと思う」「わからない」の割合は低下する。

年齢層が高いほど、実際に資金援助をした人が多いものと推察される。子どもが未婚のケースが多い50歳代では、結婚したあとまでは「資金援助はしない」と考える人が30%弱に達しているが、これらの人も、実際に子どもが資金を必要とした時には援助をする可能性を示唆している。

援助の内容で割合が高いのは、「孫の入学金など大きな出費」と「住宅購入資金」の2項目。前者のほうがやや割合が高いが、年齢層が高いほど選択率が上昇する点は共通している。実際に孫が生まれたり、子ども世帯が住宅購入を検討している様子をみて、援助してやりたい気持ちになる(あるいは実際に援助をした)ものと考えられる。

選択率の高かった2項目について、世帯貯蓄残高による違いを見たところ、「孫の入学金など大きな出費」の援助については大きな差は認められないが、「住宅購入資金」は世帯貯蓄残高が「500万円未満」の人は11.4%であるのに対し、「2,000万円以上」の人では40%を超え、顕著な差が見られた。

「住宅購入資金」についてはまとまった資金が必要なことが多いため、援助する親自身の経済状況に大きな影響を受ける。いっぽう、孫に関する援助は金額的にさほどではないこともあり、あまり影響を受けないことが伺える。

子どものいる人に対して、子どもから受ける援助について、〝経済的な援助〟と〝介助〟に分けて集計した。「子どもに経済的な援助を期待するか」という質問に対し、「そう思う」「ややそう思う」と答えた人は、7.7%とごく少数。〝引退後に子どもに養ってもらう〟と考える熟年夫婦はほとんどいない。

いっぽう、「自分が介助の必要な状態になったときに子どもの介助を期待するか」について尋ねたところ、「そう思う」「ややそう思う」と回答した割合が20%を超えた。また「どちらともいえない」の割合が30%を超えている。状況によっては子どもに頼らざるを得ないという気持ちの表れとみられる。

経済的には自分で何とかできそうだが、〝介助〟についてはどのような状況に陥るか予想できないため、子どもに頼りたい気持ちが生じたり、その気持ちを捨て切れなかったりすることが伺える。

配偶者が亡くなって1人になった親がいる人に、その親の介助の要否について尋ねたところ、50歳代の30%、60歳代では50%が「介助が必要」と答えた。

次に介助の要否別に親との住まい方を見ると、介助が不要な場合の住まい人は、「夫の親」と「妻の親」とで明らかな違いが見られる。「夫の親」とは、「同居または二世帯住宅」の割合が最も高く、50歳代で36.1%、60歳代では45.5%。いっぽう「妻の親」は「兄弟姉妹と同居または近居」の割合が最も高く、50歳代で45.3%、60歳代では48.1%となっている。息子が親と同居し、家を継ぐという慣習がまだ残っていることによるものと推察される。

親の介助が必要になったらという質問に対し、「親は介護施設に入居」が最多で、「夫の親」の場合、介助が不要なときと比較すると、「同居または二世帯住宅」の割合は低下し、50歳代で26.4%、60歳代では23.5%。特に60歳代での選択率の低下が著しく、その分「介護施設等に入居」の割合が44.1%と際立って高くなっている。

いっぽう「妻の親」の場合には、「同居または二世帯住宅」の割合は不変だが、「兄弟姉妹と同居または近居」の割合が大きく低下し、「介護施設等に入居」の割合が大幅に高まる。親が元気なうちはいいが、介助が必要になると、家庭でケアをすることには限界があると考えていることが伺える。

男性の有業者(正規と非正規就労者)に、仕事に満足しているかを尋ねたところ、〝満足派〟(「そう思う」と「ややそう思う」)の割合は、50歳代前半は56.3%、60歳代後半では73.0%と、年齢とともに高まっている。

前項の〝満足派〟の人に、仕事に満足している理由を尋ねたところ、「仕事の内容」を挙げる割合は、60歳代のほうが50歳代よりも5ポイントほど高い結果。年齢の高まりとともに「就労時間」を挙げた人が増え、60歳代後半では40%近くにのぼった。その理由として、非正規就労者の割合の増加と、その労働日数が少ないことが挙げられる。

50歳代前半の有業者のうち非正規就労者は4.8%にすぎないが、60歳代前半では31.0%、同じく後半では62.0%に上昇。そして、非正規就労者の労働日数は「週に5日以上」が50.8%、「週に3、4日」が33.8%と、3人に1人が労働日数の少ない勤務形態であった。

自由時間を十分確保できることや、体力的に無理なく働けることに満足感を感じる人が多いようだった。なお、「収入」「雇用の安定性」は年齢とともに低下するが、生活費のすべてを就労による所得で賄う必要がなくなることと関係していると推察される。

〝満足派〟の人に、働く主な目的を尋ねたところ、60歳代で大きく低下するのは「生活のため」。公的年金の受給が始まり、生活費のすべてを仕事で得る収入で賄わなくても済むため、収入を得るという目的は相対的に低下したと推察される。

いっぽう、60歳代になると「健康のため」を筆頭に、「生きがいを得るため」「人との関わりを持つため」「無為に過ごしたくない」の割合が上昇。〝年金収入を得ながら週に3、4日働き、相応の収入も得て、残りの日は好きなことを十分楽しむ。仕事は健康維持や社会との関わりを持ち続けるのにも有効〟と、仕事偏重の50歳代までと様変わりのワークライフバランスの状態にあるのが、60歳代就労男性の一つの典型的なタイプといえる。

どの程度、定期的に貯蓄を行っているかを尋ねたところ、年齢層別に見ると、50歳代は60%ほどの人が「毎月している」と回答。60歳代は、前半の人の44.6%、後半の人の37.8%が「毎月している」という結果。ちなみに、60歳代後半の就労率(正規と非正規の合計)は23.3%。貯蓄を「毎月している」人の割合(37.8%)はこれを上回る結果だった。引退した人が多い60歳代でも毎月貯蓄をしている人は少なくない。

60歳代男性で無業の人の貯蓄頻度を見たところ、分析対象の半数弱が「以前はしていたが今はしていない」と回答。いっぽう、「毎月貯蓄」という回答が27.0%。年金生活を送る人の4人に1人は毎月貯蓄をしているという結果だった。

勤めを引退した60歳代の男女に、睡眠や食事など以外に多くの時間をかけていることを尋ねたところ、男性のトップは「テレビ・ラジオの視聴」で、半数の人が挙げた。「新聞・雑誌」の選択率も40%と高く、男性は家の中でマスメディアとの接触に費やす時間が多いようだった。女性は「家事」がトップで70%弱。「家事」を挙げた男性は10.7%にとどまり、男女差は56.3ポイント。引退後も男性の家事参加率は低く、家事はもっぱら妻に委ねられている家庭が多いことが伺える。

現在勤めている50歳代の人を対象に、引退後に取り組みたいことを尋ねたところ、男性のほうが女性より高割合で、差が大きな項目は「夫婦の対話」「地域活動への参加・近所づきあい」。いっぽう、女性のほうが高割合の項目は「友人や仲間との交流」「趣味を持つこと」。男女の差を見ると、「夫婦の対話」は男性のほうが12.2ポイント高く、「友人や仲間との交流」は女性のほうが21.6ポイント高い。「妻との対話」を望む夫に対し、「友人や仲間との交流」を望む妻という男女の意識差が見られた。

男女ともに「健康維持・増進」の割合は70%超と高割合。健康に関しては、熟年世代の男女に共通した関心事であることが伺えた。

「現在どのような人との交流が多いか」を尋ねたところ、就労率が90%を超える50歳代の男性の場合、約70%の人が「職場の人」を挙げている。しかし、年齢が高まり就労率が低下するとともに、この割合も低下。60歳代後半の男性では25%にとどまった。女性の場合、就労率が男性ほど高くないため、男性ほど顕著ではないが、年齢が高まるにつれて「職場の人」の割合は低下している。

年齢の高まりとともに「近隣の人」「趣味・スポーツを通じての友人・知人」という主に地域の人との交流割合が高まっている。男性の場合、50歳代前半の人と60歳代後半の人を比べると、「近隣の人」「趣味・スポーツを通じての友人・知人」との交流割合は、60歳代後半の人のほうが約2倍になっている。女性の場合、年齢層による差は男性ほど顕著ではないが、年齢とともに地域の人との交流割合は高まっている。年齢の高まりとともに、交流関係が〝職域〟から〝地域〟に移っていく様子が伺える。

年齢の高まり、すなわち就労率が低くなるほど「家への行き来をする」割合が上昇し、近隣や地域の人々との付き合いが深まっている。逆に「ほとんど付き合いがない」の選択率は低下している。年齢の高まりとともに、近隣や地域の人との付き合いが深まっている様子がわかる。

各年齢層において、女性は「家への行き来をする」割合のほうが「祭りなど地域でのイベントを共にする」を上回っている。逆に、男性は「祭りなど地域でのイベントを共にする」割合のほうが高い。近隣や地域との付き合いとして、妻は〝隣近所との行き来〟といった日常的で個人的な付き合いを意識し、夫は〝地域の祭り〟など非日常的で集団活動への参加を想定する傾向が見られる。

現在、どのような地域活動に参加しているかを尋ねたところ、多くの項目で、年齢の高まりとともに参加率が上昇している。引退により自由な時間が生まれ、地域活動への参加率が上昇する様子が伺える。各年齢層とも参加率が高いのは「町内会・自治会」活動。

また、町内会・自治会活動の一環として行われることの多い「祭などの地域行事」「地域の防犯・防災」も上位に挙げられている。参加率の上位項目は、義務的性格を持つ活動だった。スポーツや趣味などの〝サークル〟活動の参加率も60歳代では上位項目となっている。特に「趣味などのサークル」には、女性の3人に1人が参加している。

「今後、地域のどのような活動に参加したいか」に対する回答を見ると、「参加したいとは思わない」の割合はほぼ1桁台で、地域活動に積極的に参加したい人が多い。特に「趣味などのサークル」活動は男性で30%台、女性は40%台の人が挙げており、現状と比べると50歳代では男女とも25ポイント近く増加している。

いっぽうで、男性は「町内会・自治会」、女性は「町内会・自治会」「祭などの地域行事」は今後の参加意向の割合のほうが現状より低い。義務的な性格を持ち、相手を自由に選べないことや活動日時が決められていること等が敬遠される一因といえる。

「自分の知識や技能が活かせるなら分野は問わない」を選択した割合も20%超で少なくなかった。自分が役に立てれば、自分の存在意義を確認できることから、地域活動に積極的な人々が少なからずいることが伺えた。

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